ホウレンソウ栽培の肥料/普通化成・化学・有機質の施肥量管理!
ホウレンソウに限らず野菜を上手に育てるには、野菜の種類に合った施肥管理が大切です。
当サイトでは、施肥量を、3タイプに分けて紹介しています。
ホウレンソウづくりの参考になれば幸いです。
目次
ホウレンソウ栽培の施肥量
ホウレンソウ栽培の土づくり・元肥・追肥の施肥量を以下の3タイプに分けて表示しています。
- 普通化成肥料のみを使う場合
- 化学肥料+普通化成肥料を使う場合
- 化学肥料+有機質肥料を使う場合
【施肥量の条件について】
施肥量は、気候や土質によっても変わってきます。紹介する施肥量は、一般地(関東地方南部を基準)の有機物を多く含む土壌で野菜を作る場合の目安です。また、土づくりでは、下表で示す堆肥の他、作物に合った土壌のpHになるように、必要に応じて、石灰資材を施用することが必要です。
ホウレンソウに与える3タイプの施肥量
【秋まき 冬どりの場合】
必要な全肥料分(g/㎡) N=15・P=15・K=10 | |||
畑に施す堆肥と肥料の量(㎡当たり) | |||
土づくり | 元 肥 | 追 肥 | |
普通化成肥料 (8・8・8)限定 |
植物質堆肥 =2kg |
普通化成 =188g |
なし |
普通化成(8・8・8)は、手軽で簡単、初心者にも向いています。ただし、野菜が必要とする肥料分は必ずしも三要素が同量ではないので、不足する成分や、逆に過剰となる成分がでることになります。 | |||
土づくり | 元 肥 | 追 肥 | |
化学肥料 +普通化成肥料 |
植物質堆肥 =2kg |
|
なし |
化学肥料(単肥)と普通化成(8・8・8)を組み合わせて使う場合です。無駄のない合理的な施肥が可能になります。 | |||
土づくり | 元 肥 | 追 肥 | |
化学肥料 +有機質肥料 |
植物質堆肥または 牛ふん堆肥 =2kg |
|
なし |
地力が十分ついていない畑で、いきなり有機質肥料を使うと、分解が遅れて肥料切れを起こしたり、逆に保肥力がないため、肥焼けを起こしたりしがちです。そこで、有機栽培への過渡期には、元肥は有機質肥料を中心にし、すぐ効かせたい肥料には化学肥料を使うこの方法がおすすめです。 |
【上記表の共通事項/肥料成分】
- 必要な全肥料分(g/㎡)/ N=15・P=15・K=10
- 硫安(N=21)
- 過石(P=17)
- 硫加(K=50)
- 油粕(N・P・K=5・2・1)
- 骨粉(N・P・K=3・14・0)
- 魚かす(N・P・K=6・6・1)
ホウレンソウ栽培/施肥のポイント
葉を収穫する野菜なので、生育初期から窒素を切らさないようにしてください。
栽培期間が短いので、元肥だけで育てますが、多肥にならないように、少しづつ肥料を効かせるのがコツです。そのためにも、土づくりをしっかりして、保肥力を高めること、また、酸性土壌を嫌うので、※pH調整が大切です。
元肥は全面施肥(畑の全面に肥料をばらまき、よく耕して全体に混ぜてから畝を立てる。)にしてください。
※【pH調整について】
pHは水素イオン(H+)濃度を表す指数で、0〜14の数値【0(酸性)〜7(中性)〜14(アルカリ性)】で表されます。
- 酸性が強い土壌=野菜の根が傷む、根がリン酸を吸収しにくくなるなど、野菜にとっては良い条件ではありません。
- アルカリ性が強い土壌=マグネシウムや鉄などのミネラルの吸収が妨げられ、野菜の育ちが悪くなります。また、病気もかかりやすくなります。
作物を育てていると土壌は酸性に傾いてきます。
作物はそれぞれの種類ごとに、酸性を好むもの、アルカリ性を好むものがあり、生育に適したpH値(好適土壌酸度)というものがあります。
ホウレンソウの栽培に適したpH値は6.5~7.0とされていますので、土壌の酸性化には注意が必要です。
野菜に与える元肥と追肥
【元肥と追肥に分けて施す!】
栽培期間中に必要とする肥料の量(全必要量)は、作物ごとに決まっています。これを一度に施すと、肥焼けによって根が傷むうえに、吸収できなかった分が無駄になり、地下水など環境中に流れ出してしまいます。そのため、肥料は元肥と追肥に分けて施します。ただし、コマツナやホウレンソウなどの軟弱野菜は、栽培期間が短く、必要とする肥料の量もさほど多くないので、元肥だけで育てるのが一般的です。
野菜づくり/元肥の施し方!
元肥は作付前に畑に施します。石灰資材の投入から一週間間をあけ、化学肥料の場合は作付の4~5日前、有機質肥料の場合は1~3週間前に施します。
肥料の施し方には、作物の下に施す『溝施肥』と、畝全体に混ぜ込む『全面施肥』があります。それぞれ向いている作物があるので、使い分けてください。
【溝施肥が向いている野菜】=栽培期間が長いトマトやナスなどの果菜類、比較的栽培期間が長いキャベツやハクサイなど。
【前面施肥が向いている野菜】=根をまっすぐに伸ばしたいダイコンやニンジンなどの根菜類、栽培密度の高いコマツナやホウレン草などの軟弱野菜など。
野菜づくり/追肥の施し方!
作付後、1ヶ月ほどで元肥の肥料効果が切れてくるので、追肥を開始します。追肥は窒素とカリを施しますが、作物の様子をみながら、1ヶ月に1回を目安に、作物に合った量の追肥を施していきます。
【化学肥料の追肥】
化学肥料を使うなら、単肥を組み合わせるか、NK化成(窒素とカリのみを含む化成肥料)を使うとよいでしょう。三要素を含む化成肥料も使えますが、その場合、追肥で施したリン酸が効くのは次作以降になります。
【有機質肥料の追肥】
追肥は、早く効果が現れる必要があるので、有機質肥料を使うなら、※ボカシ肥などの発酵済みのものや、発酵鶏ふん、魚かす、草木灰などを利用します。さらに、分解を早めるために、土とよく混ぜることが大切です。
※ボカシ肥=鶏ふんや油粕などの有機物を発酵させて、ガス害などの心配をなくし、早く効くようにした肥料。
【追肥の施す場所】
追肥の施す場所は、根が伸びる先です。地上部の外周あたりまで、根は伸びているので、それを目安に、畝の肩や株間、通路などに施します。マルチを張っているときは、マルチを剥がして畝の肩に施すか、通路に施してください。
単肥の使い方!
三要素(窒素・リン酸・カリ)のうち、窒素とカリは全必要量の半分を元肥で施します。リン酸は、土の中を移動しにくく、追肥で土の表面に施しても根が張っている地中まで届かないので、元肥で全量を施します。この、基本施肥に従って単肥を組み合わせて使うと、必要な施肥が簡単に行えます。
【三要素が等量の化成肥料を使う場合】
必要なリン酸を、三要素等量の化成肥料だけで、賄おうとすると、窒素とカリが多くなりすぎるので、単肥『過リン酸石灰』を併用します。
【化成肥料限定で、正確な施肥をする場合、以下のようにするとよいでしょう。】
施肥量は、植物の生育に最も影響があると考えられる「窒素」の量で計算します。そのため、元肥では「リン酸」が不足するので、その分を過リン酸石灰で補います。また、「窒素」よりも「カリ」の必要量が少ない野菜では、「カリ」が過剰になります。そこで、ときどき追肥で化成肥料を使うのを止め、「硫安」と「硫加」を組み合わせて「カリ」の量を調整します。
【有機質肥料を使う場合】
肥料ごとに、含まれる成分と成分量が異なるので、計算をして、必要量を算出し単肥を組み合わせます。
野菜づくり/三要素の元肥と追肥の分け方
【窒素の使い方】
- 元肥=半分を元肥で施します。施せるのは、成分量10~15g/㎡までです。それ以上になると、肥焼けなどの障害が起きます。
- 追肥=栽培期間に合わせて、1~3回程度に分けて施します。1回当たりに施せるのは、成分量5~10g/㎡までです。
【リン酸の使い方】
- 全量を元肥で施します。
【カリの使い方】
- 元肥=半分を元肥で施します。
- 追肥=栽培期間に合わせて、1~3回に分けて施します。
ホウレンソウ栽培の肥料について
(野菜づくりの施肥量と元肥・追肥の与え方)のまとめ
一口に肥料といっても、様々な種類があり、効果や働きも違います。また、肥料と同じように、作物に欠かせない資材に堆肥があります。どちらも作物を健康に育てるために、土に施すものですが、その働きは違います。
肥料は『植物のための食事』として、また、堆肥は『植物のためのより良い環境づくり』に役立ちます。ただし、草木や野菜はそれぞれ、『食べたい肥料』や『住み着きたい環境』が異なりますので、よく調べて育てることが大事です。
※肥料の使用方法は、植物の生態や栽培環境により異なります。また、個人的な見解・解釈もありますので、事前によく調べる必要があります。
参考:隔月刊|やさい畑|2015秋号|光の家協会(JAグループ) 発行