過リン酸石灰の特徴と使い方【肥料の上手な施し方】

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過リン酸石灰は元肥で使うリン酸肥料!

過リン酸石灰は、化学肥料の一種で、水溶性リン酸を14~17%ほど含む単肥です。すぐに水に溶けて、根が吸収できる状態になりますが、土に触れると間もなく土壌中のアルミナや鉄に吸着・固定されてしまいます。そのため、追肥で施しても、地表近くの土に吸着・固定されて、根のある地中まで届きにくいので、元肥で利用します。

過リン酸石灰(過 石)肥料の特徴

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【過リン酸石灰 肥料 成分】

  • 窒 素(N)=0
  • リン酸(P)=17~20(内水溶性リン酸14~17)
  • カ リ(K)=0

過リン酸石灰は、名前にもあるように、石灰を含んでいますが、酸性の土壌を調整する働きはありません。

過リン酸石灰は、土壌中のアルミナや鉄に吸着・固定されてしまうと、その分のリン酸を作物が利用できなくなってしまいます。過リン酸石灰を使用するさいは、土に吸着される分を見越して、施す必要があります。

リン酸の、土への『吸着・固定』は、土の種類によっても変わってきます。「黒ぼく土」などの火山灰土壌は、この『吸着・固定』の力が強いので、リン酸の施肥量が多くなります。

過リン酸石灰 肥料の使い方

商品参考画像=朝日工業株式会社

過リン酸石灰は、元肥として施しますが、窒素肥料カリ肥料を組み合わせて施してください。

リン酸は、酸性土壌の場合、土への吸着・固定の力が強くなります。そのため、リン酸が効率よく作物に吸収されるためには、土壌のph調整は欠かせません。
ただし、ph調整のための石灰資材草木灰過リン酸石灰同時に施してはいけません。リン酸が水に溶けにくい状態に変化し、肥料効果が薄れてしまいます。

※土壌のph調整は、過リン酸石灰を施す、1週間ほど前に済ませるようにしてください。

過リン酸石灰のリン酸成分を効率よく利用するには、土と直接触れないように、堆肥に包み込んで畝の下に施す『溝施肥』がおすすめです。リン酸が土壌中のアルミナや鉄に吸着・固定されにくくなり効率的に利用できます。

適正な土壌pH

作物の生育には、それぞれ適したpHがありますが、ほとんどの野菜はpH6.0~6.5 の 弱酸性を好みます。ただし、ホウレンソウは、pH6.3~7.0 とやや高め、ジャガイモはやや低いpHを好みます。

 適正ph 品  目  名
 6.3~7.0 ホウレンソウ・エンドウ など
 6.0~6.5 リーフレタス・コマツナ・ミズナ・ネギ・シュンギク など多くの野菜
 5.5~6.0 ジャガイモ・ニンニク など

【適正phでないとどうなる?】

一般的に、pHが 5.0 を下回るような低pHの土壌では、カリウム、マグネシウム(苦土)、カルシウム(石灰)などの欠乏症(下葉枯れなど)を起こしやすくなります。反対に、pHが 8.0 を超えるような高pHの土壌では、鉄、マンガン、亜鉛などの微量要素欠乏(葉 色が淡くまだらになるなど)の症状を起こしやすくなります。

ホウレンソウをpHが低い(概ね 5.5 以下)土壌で栽培すると、発芽はしますが 大きくならず黄化します。一方、ジャガイモをpH6.0 を超えるような高いpHの土壌で 栽培すると、「そうか病」の発生を助長しますので、それぞれの野菜に合った土壌で栽培 することが重要です。

参考引用:http://www.pref.fukuoka.lg.jp/

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肥料の上手な施し方

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画像出典:家庭菜園で有機無農薬栽培

元肥と追肥に分けて施す!

栽培期間中に必要とする肥料の量(全必要量)は、作物ごとに決まっています。これを一度に施すと、肥焼けによって根が傷むうえに、吸収できなかった分が無駄になり、地下水など環境中に流れ出してしまいます。そのため、肥料は元肥追肥に分けて施します。ただし、コマツナやホウレンソウなどの軟弱野菜は、栽培期間が短く、必要とする肥料の量もさほど多くないので、元肥だけで育てるのが一般的です。

元肥の施し方!

元肥は作付前に畑に施します。石灰資材の投入から一週間間をあけ、化学肥料の場合は作付の4~5日前、有機質肥料の場合は1~3週間前に施します。

肥料の施し方には、作物の下に施す『溝施肥』と、畝全体に混ぜ込む『全面施肥』があります。それぞれ向いている作物があるので、使い分けてください。

単肥の使い方!

三要素(窒素・リン酸・カリ)のうち、窒素とカリは全必要量の半分を元肥で施します。リン酸は、土の中を移動しにくく、追肥で土の表面に施しても根が張っている地中まで届かないので、元肥で全量を施します。この、基本施肥に従って単肥を組み合わせて使うと、必要な施肥が簡単に行えます。

【三要素が等量の化成肥料を使う場合】

必要なリン酸を、三要素等量の化成肥料だけで、賄おうとすると、窒素とカリが多くなりすぎるので、単肥『過リン酸石灰』を併用します。

【有機質肥料を使う場合】

肥料ごとに、含まれる成分と成分量が異なるので、計算をして、必要量を算出し単肥を組み合わせます。

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画像出典:家庭菜園で有機無農薬栽培

追肥の施し方!

作付後、1ヶ月ほどで元肥の肥料効果が切れてくるので追肥を開始します。追肥は窒素カリを施しますが、作物の様子をみながら、1ヶ月に1回を目安に、作物に合った量の追肥を施していきます。

【化学肥料の追肥】

化学肥料を使うなら、単肥を組み合わせるか、NK化成(窒素とカリのみを含む化成肥料)を使うとよいでしょう。三要素を含む化成肥料も使えますが、その場合、追肥で施したリン酸が効くのは次作以降になります。

【有機質肥料の追肥】

追肥は、早く効果が現れる必要があるので、有機質肥料を使うなら、※ボカシ肥などの発酵済みのものや、発酵鶏ふん、魚かす、草木灰などを利用します。さらに、分解を早めるために、土とよく混ぜることが大切です。

※ボカシ肥=鶏ふんや油粕などの有機物を発酵させて、ガス害などの心配をなくし、早く効くようにした肥料。

【追肥の施す場所】

追肥の施す場所は、根が伸びる先です。地上部の外周あたりまで、根は伸びているので、それを目安に、畝の肩や株間、通路などに施します。マルチを張っているときは、マルチを剥がして畝の肩に施すか、通路に施してください。

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画像出典=畑づくり:ジッチのミニ菜園

まとめ

一口に肥料といっても、様々な種類があり、効果や働きも違います。また、肥料と同じように、作物に欠かせない資材に堆肥があります。どちらも作物を健康に育てるために、土に施すものですが、その働きは違います。

肥料『植物のための食事』として、また、堆肥は『植物のためのより良い環境づくり』に役立ちます。ただし、草木や野菜はそれぞれ、『食べたい肥料』『住み着きたい環境』が異なりますので、よく調べて育てることが大事です。

※肥料の使用方法は、植物の生態や栽培環境により異なります。また、個人的な見解・解釈もありますので、事前によく調べる必要があります。

参考:隔月刊|やさい畑|2015秋号|光の家協会 発行


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