家庭菜園には欠かせない肥料の種類と特徴の基礎知識!
家庭菜園に限らず、あらゆる植物には肥料が欠かせません。この肥料がどのように作用するのか、肥料の種類と特徴を理解しておくと、いろいろなトラブルに対処しやすくなり、野菜や草花を見事に育てることができます。
家庭菜園は、まず作物が元気に育ってくれなければ、全く楽しくありません。施す肥料の特徴を理解し、正しく使用するとで、順調な作物の生長過程を楽しみ、そして収穫を喜ぶことができます。
ホームセンター等で、むやみに肥料や土を購入する前に、当サイトを参考にしていただければ幸いです。
目次
植物に必要な17の要素
植物が生きていくために、欠かせない栄養素があります。それが『植物の必須要素』と呼ばれるもので、17種類の要素からなっています。
【自然要素】
大気や土壌中から自然に供給されるため、施す必要のない要素
炭素(C)・酸素(O)・水素(H)
【微量要素】
土づくりができていれば、特に肥料として施す必要のない要素
鉄(Fe)・銅(Cu)・マンガン(Mn)・亜鉛(Zn)・ホウ素(B)・モリブデン(Mo)・塩素(CI)・ニッケル(Ni)
【多量要素】
『肥料の三要素』と呼ばれ、特に重要な要素
窒素(N)・リン酸(P)・カリ(K)
肥料の三要素の次に重要な要素
カルシウム(Ca)・マグネシウム(Mg)・イオウ(S)
有機肥料と化学肥料の違い
肥料には多くの種類がありますが、大きく分けて『有機質肥料』と『化学肥料』とに分けられます。
【有機質肥料】
有機質肥料は、動物性や植物性の有機物を原料としたものです。骨粉や魚かす、米ぬかなど、単一の原料からできているもののほか、数種類の有機質肥料を混ぜたもの、さらに発酵させたものなど様々です。
土の中の微生物に分解されることで初めて根から吸収できるため、基本的に、ゆっくり効果が現れ、長く持続する(緩効性)のが特徴です。また、土を「フカフカ」にする効果もあります。
【化学肥料】
化学肥料は、化学的な工程によってつくられた肥料で、原料は、鉱物や岩塩、空気中の窒素ガスなど、自然界に存在する無機質が中心です。
基本的に、水に溶ければ根が吸収できるので、すぐに効果が現れるのが特徴です。三要素(窒素・リン酸・カリ)のうちの1つの肥料成分だけを含む『単肥』を利用すれば、ピンポイントで必要な肥料分を施すことができます。『単肥』に対して2種類以上の肥料成分を含む『複合肥料』もあり、手軽で扱いやすいのが特徴です。
肥料の種類と効き方
肥料の特徴を大きく分けると、以下の5つになります。
- 緩効性・有機肥料
- 速効性・有機肥料
- 緩効性・化学肥料
- 速効性・化学肥料
- 有機質系+化学系の肥料
それぞれの特徴を肥料の種類別に下記に紹介しています。
緩効性・有機質肥料
油 粕
参考画像=サカタのタネっと:マルタ一番しぼり菜種油かす
油粕は、ナタネやダイズなど、植物の種から油を搾った後のカスです。リン酸とカリも多少含んでいますが、窒素の含有量が多いのが特徴です。多く流通しているのは、ナタネ油粕で、有機を代表する窒素肥料として、古くから利用されています。
骨 粉
参考画像=大宮グリーンサービス
骨粉は、非常にゆっくりと効果が現れるリン酸肥料です。名前のとおり、骨を砕いたもので、いくつかの製造方法がありますが、一般に流通しているのは、ブタやニワトリなどの骨を高温、高圧の蒸気で処理し、乾燥、粉砕した蒸製骨粉です。
米ぬか
参考画像=有機肥料‐無農薬野菜の宅配 青木農家
米ぬかは、ゆっくり効くリン酸メインの肥料で、堆肥づくりにも適しています。米ぬかは玄米を精米するときに出る粉で、米屋や無人精米所などで手に入る「生の米ぬか」と、肥料として販売されている「脱脂米ぬか」とに大別されます。
バットグアノ
参考画像=【楽天市場】バットグアノ:そのきや
バットグアノは、一般的にコウモリの糞が化石化したリン酸肥料ですが、窒素が多い窒素質バットグアノもあります。周囲の環境が影響するため、バットグアノは、採取場所によって、また堆積した年数によっても、含まれる成分が異なります。
有機100%配合肥料
有機100%配合肥料は、これ一つで、複数の肥料成分がバランスよく施せるように、 数種類の有機質肥料を混ぜたり、複数の有機物を混ぜて発酵させたりした肥料です。各社から様々な種類が販売されています。
速効性・有機質肥料
草木灰
参考画像=【楽天市場】米沢園芸
草木灰は、草や木を燃やしてできた灰で、果菜類の味をよくする、速効性のあるカリ肥料です。なにを燃やしたかによって、成分や成分量が変わってきますが、主体はカリで、他にリン酸と石灰を含みます。
発酵鶏ふん
参考画像=大宮グリーンサービス
発酵鶏ふんは、ニワトリのふんを発酵させたもので、三要素を含み速効性があり追肥にも使えます。「乾燥鶏ふん」に比べると、成分量は少なくなりますが、ガス害の心配がなく扱いが容易です。
魚かす
参考画像=森産業株式会社
魚かすは、魚を煮て圧縮し、水と脂分を抜いて乾燥させたものです。原料となるのは、缶詰などの食品加工場から出た加工残渣や魚屋・料理店などから出た残渣などです。窒素とリン酸を多く含み、有機質肥料の中では比較的、速効性があります。
緩効性・化学肥料
熔成(ようせい)リン肥(熔リン)
参考画像=朝日工業:BMようりん
熔成リン肥は、化学肥料の一種で、水に溶けにくく、植物の根や土壌微生物が出す有機酸によって、ゆっくり溶けだす※「く溶性」リン酸を20%ほど含んでいます。主に、火山灰土壌の土壌改良に用いられます。
※く溶性=クエン酸2%液で溶ける肥料成分のことです。根から出る根酸程度の弱い酸にはすぐに溶けませんが、もう少し強い酸に溶ける成分です。徐々に溶け出すためゆっくり効きます。
速効性・化学肥料
硫 安(りゅうあん)(硫酸アンモニウム)
参考画像=朝日工業株式会社
硫安は化学肥料の一種で、窒素のみを含む単肥です。水に溶けやすく、すぐに効果が現れます。窒素の含有量は21%で、普通化成と比べると多いですが、化学肥料の単肥としては、尿素よりも少なく、扱いやすい肥料です。
尿 素(にょうそ)
参考画像=朝日工業株式会社
尿素は、化学肥料の一種で、硫安と同じく窒素のみを含む単肥です。水に溶けやすく、すぐに効果が現れるので、追肥に向いていますが、元肥にも利用できます。ただし、窒素の含有量が46%と多く、過剰施肥には注意が必要です。
過リン酸石灰(過 石)
参考画像=【楽天市場】悠彩堂:朝日工業
過リン酸石灰は、化学肥料の一種で、水溶性リン酸を14%~17%ほど含む単肥です。すぐに水に溶けて、根から吸収しやすいですが、土に触れると、間もなく土壌中のアルミナや鉄に吸着・固定されてしまいますので、元肥で利用します。追肥で施しても、根のある地中まで届きにくい肥料です。
硫酸カリ
参考画像=朝日工業株式会社
硫酸カリは、化学肥料の一種で、水に溶けやすいカリを50%ほど含む、速効性のある単肥です。水に溶けたカリは、土壌にも多少は保持されるので、追肥だけでなく、元肥にも利用できます。
普通化成
参考画像=有限会社 緑産業
普通化成は、窒素・リン酸・カリの三要素の成分量の合計が15%以上~30%未満のものです。「普通化成」は、三要素の成分量が30%以上の「高度化成」に比べると肥料成分が少ない分、施しすぎによる失敗が少なく、初心者でも安心して使えます。
有機質系+化学系の肥料
参考画像:マイガーデンベジフル/住友化学園芸
化学肥料は、肥料成分が安定していて扱いやすいのですが、化学肥料だけを使い続けていると、土壌に有機物が補給されません。土壌の物理性や生物性をより高めるためには、有機物の施用が必要です。そこで、良質な土づくりができる有機質肥料や有機物を化学肥料にブレンドしたのが、このタイプの肥料です。
『有機質系+化学系』の肥料は、多くのメーカーから様々な種類が販売されていますが、速効性の化学肥料と緩効性の有機質肥料が組み合わされているため、効果がすぐに現れて、ゆっくり長く効くものがほとんどです。また、一つの製品ですむように、三要素を中心に複数の肥料成分が含まれています。
※成分バランスは製品により様々です。
有機質系+化学系の肥料の特徴と使い方
- 『有機質系+化学系』の肥料は、製品ごとに特徴や形状、使い方も異なるので、パッケージの記載をよく読んで、目的に合ったものを選んでください。
- 『有機質系+化学系』の肥料は、基本的には元肥用で、作物の種類に合った配合がされており、最初に施すだけで、良く育つように調整されています。しかし、中には元肥と追肥、両方に使えるものもあります。
- 有機質と無機質の原料を混ぜた粉末の配合肥料もあれば、1粒の中に化学肥料の成分と有機物が入った、扱いやすい粒状の化成肥料もあります。
- 作物ごとの肥料吸収バランスに合わせて、元肥として効く有機化成肥料に、効きだす時期が異なる複数の被覆肥料を組み合わせたものもあります。
肥料と堆肥の違い
画像出典:畑づくり:ジッチのミニ菜園
肥料であっても、有機質肥料であれば、もちろん堆肥と同じような、土を良くする働きがあります。しかし、肥料だけでは十分な改良効果が望めず、別に堆肥を施す必要があります。また、堆肥にも肥料成分が含まれていますが、その量はさほど多くありません。そのため、別に肥料を施す必要があります。
肥料の役割
肥料の働きは、生育を直接助け、植物の体を形づくることです。いわば、植物の食事のようなものですが、特に『肥料の三要素』と呼ばれる、窒素(N)・リン酸(P)・カリ(K)は重要で、量もたくさん必要とします。
【窒 素(N)】
肥料に含まれる窒素は、「葉肥」とも呼ばれ、茎葉や根の伸長に特に重要な役割を果たします。また、植物の体を構成するタンパク質の原料となります。
【リン酸(P)】
「花肥」「実肥」とも呼ばれ、開花や結実を促し、茎葉や根の伸長を助けます。また、植物の生命活動に欠かせない物質の原料となります。
【カリ(K)】
「根肥」とも呼ばれ、根や茎を丈夫にし、タンパク質の合成、細胞の生長、光合成といった、植物の生理作用を助けます。
堆肥の役割
堆肥は、主に植物が根を下ろす土の状態を良くするためのものです。
堆肥を土に入れると、土がやわらかく、フカフカになって、通気性・排水性・保水性が良くなることで、保肥力が上がります。さらに、土壌微生物や土壌生物の種類と量が増えて、土壌の生物相が豊かになります。このように、土を健康にして、間接的に植物が良く育つようにするのが、堆肥の役割です。
肥料の種類と特徴【家庭菜園 初心者の基礎知識】のまとめ
肥料は『植物のための食事』として、また、堆肥は『植物のためのより良い環境づくり』に役立ちます。ただし、草木や野菜はそれぞれ、『食べたい肥料』や『住み着きたい環境』が異なりますので、よく調べて育てることが大事です。
※肥料の使用方法は、植物の生態や栽培環境により異なります。また、個人的な見解・解釈もありますので、事前によく調べる必要があります。
参考:隔月刊|やさい畑|2015秋号|光の家協会 発行