銅は鉄のサポートに欠かせないミネラル!
銅は栄養素としての働きがあまり知られていませんが、鉄が正常に働くために、欠かせない栄養素です。そのため、銅が不足すると、鉄不足と同じような症状を招きます。何気なく、サプリメントで補給する人もいますが、銅の特徴を理解することも大事です。
当サイトが、食事やサプリメントでの栄養補給の参考に、また日々の当たり前の健康を維持するための参考に一読いただければ幸いです。
銅が不足すると?
【銅-おすすめの人】 |
貧血ぎみ・骨粗しょう症予防・動脈硬化予防 |
銅が不足すると、鉄を血液のもととなる赤血球(ヘモグロビン)に変えられず、貧血(鉄欠乏性貧血)を起こします。また、銅は血管壁や骨を強くするコラーゲンの合成にも関わっているため、不足すると骨粗しょう症や動脈硬化を招きやすくなります。
【銅-欠乏症状】
- ヘモグロビンの成分が減少し、貧血になる。
- 骨折・変形をおこす。
- 遺伝的に欠乏を起こす「※メンケス病」の発症。
※メンケス病=日本では現在12~14万人に1人の割合で発症する、遺伝性の疾患です。
多くの患者さんは2~3歳で亡くなってしまうために、この病気のことを知っている方も少なく、治療の難しい病気です。
銅の働き/特徴
画像出典:銅|成分情報|わかさの秘密
銅は成人体内に70~100㎎が存在しており、通常は、骨、筋肉、肝臓にあります。この銅のほとんどが、タンパク質と結合し、鉄の利用を高め、赤血球の合成を助けます。また、細胞間の結合組織となり、丈夫な骨や皮膚をつくるコラーゲンの生成にも欠かせません。その他、老化を招く過酸化脂質の分解にも働きます。
銅の役割
血液中にあるヘモグロビンは鉄から合成されますが、このとき、銅は重要な役割を果たしています。腸管から吸収された鉄は、銅と結合した「※セルロプラスミン」というタンパク質によって、ヘモグロビンに合成できるようにつくり変えられます。このため、銅が不足すると鉄がヘモグロビンにスムーズに合成されなくなり、『鉄欠乏性貧血』を起こしてしまいます。
※セルロプラスミンは、肝臓で産生される蛋白(たんぱく)で、銅の運搬と代謝、および鉄の代謝にも関与しています。
銅を含む食材と摂取基準
画像出典:ホタルイカの甘辛炒め【E・レシピ】
銅は肉類や魚貝類に豊富!
銅は肉類の中でもレバーに豊富です。また、魚介類や種実類にも多く含まれています。ただし、亜鉛やビタミンCを大量に摂ると銅の吸収が妨げられるため、サプリメントを利用する場合、注意が必要です。
(参考食材)銅-可食部100g当たり成分値(㎎) | ||||
肉 類(㎎) | 魚介 類(㎎) | |||
牛レバー(生) | 5.30 | ホタルイカ(茹で) | 2.97 | |
豚レバー(生) | 0.99 | うなぎ肝(生) | 1.08 | |
鶏レバー(生) | 0.32 | 牡蠣/かき 養殖(生) | 0.89 | |
牛タン(焼き) | 0.12 | ズワイガニ(茹で) | 0.56 | |
豚 肩ロース赤肉(生) | 0.10 | 貝/シジミ(生) | 0.41 | |
種実 類(㎎) | 豆 類(㎎) | |||
カシューナッツ(フライ味付け) | 1.89 | そら豆(乾) | 1.20 | |
アーモンド(フライ味付け) | 1.11 | あずき 全粒(乾) | 0.67 | |
ココナッツパウダー | 0.80 | あずき こしあん | 0.23 | |
バターピーナッツ | 0.64 | 糸引き納豆 | 0.61 | |
甘 栗(あまぐり) | 0.51 | 高野豆腐(乾) | 0.57 |
- 加熱調理などにより成分値は変化します。
- 成分値は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)によるものです。これ以前の日本食品標準成分表と異なる場合があります。
銅-摂取の注意点と摂取基準
銅は通常、不足の心配はない栄養素です。現在日本人は、1日平均1.12 mgの銅を摂取しています(平成26年国民健康・栄養調査)。
銅は、広く食品に含まれることから、通常の食事で不足することはありません。逆に、銅製の調理器具による過剰症に注意が必要です。容器や調理器具に傷が付いていたり、酸性飲料を長時間保管するなどの誤った方法で使用したりすると、金属成分が食品や飲み物中に過剰に溶け出し、思わぬ事故につながることがあります。特に、銅は多量に摂取すると中毒を起こす可能性があります。
【銅製品のサビによる誤解について】
銅のサビ(緑青(ろくしょう)、青水)が毒だと思っている人がいますが、それはまったくの誤解です。昭和59年8月には、厚生省(現厚生労働省)が緑青猛毒説が間違いであることを認めています。
銅製容器が食品と直接接触することを食品衛生法で規定されています。(厚生労働省)これによって、銅鍋や銅おろし金は錫でめっきを施しています。
参考資料=厚生労働省発食安第1001006号
銅-年齢別一日の食事摂取基準(㎎/日)
年齢 | 推奨量(㎎) | 耐容上限量(㎎) | ||
男 性 | 女 性 | 男 性 | 女 性 | |
0~ 5(月) | 0.3(目安量) | 0.3(目安量) | ー | ー |
6~11(月) | 0.3(目安量) | 0.3(目安量) | ー | ー |
1~2(歳) | 0.3 | 0.3 | ー | ー |
3~5(歳) | 0.4 | 0.4 | ー | ー |
6~7(歳) | 0.5 | 0.5 | ー | ー |
8~9(歳) | 0.6 | 0.5 | ー | ー |
10~11(歳) | 0.7 | 0.7 | ー | ー |
12~14(歳) | 0.8 | 0.8 | ー | ー |
15~17(歳) | 1.0 | 0.8 | ー | ー |
18~29(歳) | 0.9 | 0.8 | 10 | 10 |
30~49(歳) | 1.0 | 0.8 | 10 | 10 |
50~69(歳) | 0.9 | 0.8 | 10 | 10 |
70以上(歳) | 0.7 | 0.7 | 10 | 10 |
妊婦(付加量) | ー | +0.1 | ー | ー |
授乳婦(付加量) | ー | +0.5 | ー | ー |
参考=日本食品標準成分表2015年版(七訂)
- 【推奨量】=ほとんどの日本人が1日の必要量を満たすと推定される摂取量。
- 【目安量】=十分な科学的根拠が得られず、設定した摂取量ですが、一定の栄養状態を維持するのに十分な量であ り、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどない。
- 【耐容上限量】=過剰摂取による健康障害の回避を目的として、設定された摂取量。
【銅製の調理器具に注意!】
銅製の調理器具を使って、酸性食品の煮込み料理をつくると、銅が料理に溶け込んでしまい、過剰な銅摂取により中毒を起こすことがあります。銅製の調理器具で酸性の食品を調理するときは、長時間置かないなど配慮したほうがいいでしょう。
【銅中毒の症状】=悪心・おう吐・下痢・胃腸炎など
銅が不足すると?
【ミネラルの働きと食材からの摂取ポイント】のまとめ
野菜、果物などに含まれる栄養素で代表的なのが、ビタミン・ミネラル・食物繊維です。これらの栄養素は、微量でも他の栄養素を手助けしたり、体の機能を正常に保ったりなど体にとって重要な働きをしており、銅もその一つです。
当然ながら、銅だけで健康な体はつくれません。まんべんなく、いろいろな食材から栄養を摂ることが大事です。
- 参考=文部科学省:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
- 参考=発行所:株式会社 永岡書店:図解でわかる!からだにいい食事と栄養の教科書
- 参考=発行所:高橋書店/あたらしい栄養学
- 参考=発行所:株式会社 学研プラス/知っておきたい栄養学