鉄は女性が不足しがちな栄養素!
小腸からの鉄の吸収率は約10%程度と低く、不足しやすい栄養素です。特に女性は月経によって鉄不足になりがちです。鉄を含む食材はもちろんのことですが、鉄の吸収を促すビタミンやミネラルを同時に摂取することが大事です。何気なく、サプリメントで補給する人もいますが、鉄の特徴を理解することも大事です。
当サイトが、食事やサプリメントでの栄養補給の参考に、また日々の当たり前の健康を維持するための参考に一読いただければ幸いです。
目次
鉄が不足すると?
【鉄-おすすめの人】 |
貧血ぎみ・月経過多の女性・妊婦・授乳婦・コーヒーや紅茶をよく飲む・疲れやすい |
鉄は血液の主成分で、全身に酸素を運ぶ役割を担っています。不足すると『鉄欠乏性貧血』となり、全身が酸欠状態に陥って、集中力が低下するほか、息切れや動悸(どうき)、頭痛などの症状を引き起こします。
特に、成長期の子供や月経のある女性、妊娠中の女性は鉄が不足しがちです。意識して鉄を摂取することが大事です。
【鉄 欠乏症状】
- 貧血になる。(赤血球数は正常であるが、ヘモグロビン量は減少する)
- 疲れやすくなる。
- 忘れっぽくなる。
- 乳児では発育が遅れる。
鉄の働き/特徴
主に血液に存在する鉄!
鉄は成人の体内に約3~5g存在しています。鉄は約70%が血液(ヘモグロビン)に、約4%が筋肉(ミオグロビン)に存在し、これらは『機能鉄』と呼ばれています。残りは、肝臓、脾臓、骨髄に存在し『貯蔵鉄』と呼ばれています。
【機能鉄と貯蔵鉄の役割】
体内の鉄は、ヘモグロビンやミオグロビンのように、酸素の運搬役として役割を果たしている『機能鉄』と肝臓や脾臓、骨髄に貯蔵されている『貯蔵鉄』があります。機能鉄が不足すると、それを補うために貯蔵鉄が利用されますが、この貯蔵鉄が少なくなると、鉄欠乏による貧血を起こします。
見落としやすい鉄不足に貯蔵鉄の検査(フェリチン検査)
血液検査で貧血と診断されなくても、貯蔵鉄が減少している場合があります。これは、『かくれ鉄欠乏症(潜在性鉄欠乏)』とも呼ばれ、通常の血液検査では貧血と診断されない場合があり注意が必要です。
一般的に、鉄不足、貧血の判断は「ヘモグロビン(血色素)」で行われ、女性の場合12~16g/dlが正常値とされています。ところが、このヘモグロビンが正常値を示していても、体内では貯蔵鉄が不足している状況は珍しくありません。厄介なのは、鉄不足による貧血とは診断されず、体調不良の原因がよくわからないという状態になってしまうことです。
【貯蔵鉄は血液中のフェリチンの量を調べて検査!】
フェリチンは、内部に鉄分を貯蔵できる蛋白で、肝臓・脾臓・心臓など各臓器に存在しており、微量ながら血液中にも存在しています。働きは、鉄分を細胞内に貯蔵して、血液中の鉄分の量を維持することです。そのため、フェリチンを検査することにより、貯蔵鉄の量を調べることができます。
≪フェリチン検査はどこで?≫
ヘモグロビン値は採血をやっている病院であればどこでも調べることができます。
フェリチンも採血を行っている病院であれば、だいたい調べることができます。しかし病院によっては外の検査機関に採血検体を送って検査するところもありますので、結果が出るのが後日となる場合があります。
鉄-摂取の注意点と摂取基準
サプリメントによる過剰摂取に注意!
鉄は吸収率が低いため、通常の食事で過剰症を心配することはありません。ただし、サプリメントなどで、耐容上限量を超えて過剰に摂り続けると、嘔吐などの胃腸障害を起こします。また、鉄が肝臓や膵臓のなどの臓器に沈着し、機能を著しく低下させる『鉄沈着症』を招く場合もあります。
C型肝炎ウイルス感染者は鉄の摂取に注意!
肝臓には鉄が貯蔵されており、鉄が不足した時のための倉庫の役割を持っています。C型肝炎ウイルスに感染している人では、肝臓に鉄が過剰に蓄積してしまうことがわかっています。鉄が過剰になると、肝細胞膜傷害やDNA傷害を引き起こし、それが肝炎の進展、更には肝がんの発生に影響を与えると考えられています。摂取量に関しては1日6㎎以内が望ましいという話もありますが、必ず医師と相談するようにしてください。
ヘム鉄(2価鉄)と非ヘム鉄(3価鉄)の違い
鉄には『ヘム鉄』と『非ヘム鉄』があります。野菜や大豆など主に植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」の吸収率は約2~5%と低いのですが、動物性食品の肉や魚に多く含まれる「ヘム鉄」の吸収率は15~25%と数倍も高くなっています。そのため、鉄の効率的な摂取には、赤身の肉や魚が適しています。
※鉄の吸収率は、食品の種類や量、どれだけ体が必要としているか、などの条件によって大きく異なるとみられ、あくまで推定値となっています。
鉄-年齢別一日の食事摂取基準(㎎/日)
年齢 | 推奨量(㎎) | 耐容上限量(㎎) | ||||
男 性 | 女性 月経なし | 女性 月経あり | 男 性 | 女 性 | ||
0~ 5(月) | 0.5(目安量) | 0.5(目安量) | ー | ー | ー | |
6~11(月) | 5.0 | 4.5 | ー | ー | ー | |
1~2(歳) | 4.5 | 4.5 | ー | 25 | 20 | |
3~5(歳) | 5.5 | 5.0 | ー | 25 | 25 | |
6~7(歳) | 6.5 | 6.5 | ー | 30 | 30 | |
8~9(歳) | 8.0 | 8.5 | ー | 35 | 35 | |
10~11(歳) | 10.0 | 10.0 | 14.0 | 35 | 35 | |
12~14(歳) | 11.5 | 10.0 | 14.0 | 50 | 50 | |
15~17(歳) | 9.5 | 7.0 | 10.5 | 50 | 40 | |
18~29(歳) | 7.0 | 6.0 | 10.5 | 50 | 40 | |
30~49(歳) | 7.5 | 6.5 | 10.5 | 55 | 40 | |
50~69(歳) | 7.5 | 6.5 | 10.5 | 50 | 40 | |
70以上(歳) | 7.0 | 6.0 | ー | 50 | 40 | |
妊婦 初期(付加量) | +2.5 | |||||
妊婦 中・後期(付加量) | – | +15.0 | – | – | ||
授乳婦(付加量) | – | +2.5 | – | – |
※過多月経(月経出血量が80㎖/回以上)の人を除外しています。
参考=日本食品標準成分表2015年版(七訂)
- 【推奨量】=ほとんどの日本人が1日の必要量を満たすと推定される摂取量。(プロビタミンAカロテノイドを含む)
- 【目安量】=十分な科学的根拠が得られず、設定した摂取量ですが、一定の栄養状態を維持するのに十分な量であ り、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどない。
- 【耐容上限量】=過剰摂取による健康障害の回避を目的として、設定された摂取量。
鉄を多く含む食材と調理法
画像出典:シジミのレシピ
鉄はレバーや貝類に豊富!
鉄を含むものは、主に動物性の食品です。中でも鉄が貯蔵されているレバー(肝臓)には、多くの鉄が含まれています。また、赤身の肉にも豊富です。
魚介類では、貝に多く、シジミやアサリなど、身近なものに豊富なので、鉄の摂取には利用しやすいでしょう。また、赤身のカツオやマグロにも鉄が豊富に含まれています。
(参考食材)鉄-可食部100g当たり成分値(㎎) | ||||
動物性食品(㎎) | 植物性食品(㎎) | |||
豚レバー(生) | 13.0 | 大根の葉(生) | 3.1 | |
鶏レバー(生) | 9.0 | 和種 菜の花(生) | 2.9 | |
牛 皮下脂肪なし (焼き) | 3.8 | 小松菜(生) | 2.8 | |
貝類/シジミ(生) | 8.3 | 枝 豆(生) | 2.7 | |
貝類/アサリ(生) | 3.8 | ほうれん草(生) | 2.0 | |
魚類/キハダマグロ(生) | 2.0 | カットわかめ | 6.1 | |
魚類/カツオ(生) | 1.9 | 糸引き納豆 | 3.3 |
- 加熱調理などにより成分値は変化します。
- 成分値は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)によるものです。これ以前の日本食品標準成分表と異なる場合があります。
鉄を効率よく摂取する調理法
鉄は調理法によっては、栄養素が溶け出してしまいます。アサリやシジミは味噌汁にしたり、肉や魚は焼くより煮込みにしたりして、煮汁まで活用し食べるのがおすすめです。
【コーヒーや紅茶との食べ合わせはNG!】
コーヒーや紅茶、ぶどうなどに含まれるタンニンという苦味成分には、鉄の吸収を妨げる作用があるため、一緒に摂るのは控えたほうがよいでしょう。また、食物繊維や豆類の皮に多く含まれるフィチン酸なども、鉄の吸収を妨げると言われています。
ビタミンCと合わせて鉄の吸収促進!
ビタミンCには、鉄の吸収率を高める作用があるので、植物性食品に含まれる吸収率の低い「非ヘム鉄」もビタミンCと一緒に摂ることで、鉄の吸収が高まります。デザートや飲み物は、ビタミンCが豊富なものがおすすめです。
【ビタミンCが豊富な食材】=緑黄色野菜・いも類・果物など
鉄製の調理器具で鉄の摂取量を増やす!
鉄鍋で調理すると、他の鍋を使った時よりも、料理に鉄分が多く含まれることが、いくつかの実験で確かめられています。
鉄のフライパンを使う場合、炒めたりするよりも、トマトや酢、梅干しなど酸性の食材と一緒に煮込むと、料理に含まれる鉄分も増えるようです。ただし、C型肝炎ウィルスに感染している人など、鉄の摂取量を制限されている場合、鉄製の調理器具は避けた方がよいでしょう。
鉄が不足すると?
【ミネラルの働きと食材からの摂取ポイント】のまとめ
野菜、果物などに含まれる栄養素で代表的なのが、ビタミン・ミネラル・食物繊維です。これらの栄養素は、微量でも他の栄養素を手助けしたり、体の機能を正常に保ったりなど体にとって重要な働きをしており、鉄もその一つです。
鉄だけで健康な体はつくれません。まんべんなく、いろいろな食材から栄養を摂ることが大事です。
- 参考=文部科学省:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
- 参考=発行所:株式会社 永岡書店:図解でわかる!からだにいい食事と栄養の教科書
- 参考=発行所:高橋書店/あたらしい栄養学
- 参考=発行所:株式会社 学研プラス/知っておきたい栄養学