半日陰で育つ常緑低木のクチナシ育て方
クチナシは、初夏のガーデニングを甘い香りで楽しませてくれます。昔はクチナシの花を着物の袂(たもと)に入れ、香の代わりにしたといわれます。
クチナシは、秋に橙赤色の果実をつけます。この果実は黄色の染料として利用され、また漢方では※山梔子(さんしし)として用いられていますが、熟しても裂開しません。つまり口が開かないことから「クチナシ」の和名がつけられたとされています。
※山梔子(さんしし)=漢方薬に用いる生薬の一つ。清熱、除煩、消炎などの効能があり、熱症状、のぼせ、イライラ感、不眠などに用いられます。
【半日陰とは】
草花の栽培条件として『半日陰』という表現がありますが、『半日陰』のはっきりとした定義はなく、日照条件もいろいろな表現がされています。しかし一般的な『半日陰』の日照条件としては、午前中の3~4時間ほど日が当たる明るい場所か、日中に木漏れ日が当たっている状態 としているようです。
目次
クチナシの特徴と育て方
クチナシは、日本(本州西部、四国、九州、西南諸島)、台湾、中国、インドシナに広く分布する常緑樹です。暖かい気候を好み、主に暖帯や亜熱帯地域に自生します。
特に日本では、海岸近くの山野に自生することが多いです。
基本種は花の基部が筒状で先が裂けて6枚の花びらなる一重咲きですが、バラのような姿の八重咲きの変種や品種もあります。園芸で利用されているのはほとんどが八重咲き種です。
クチナシの栽培方法
クチナシの花期は6月~7月で、葉腋から短い柄を出し、一個ずつ花を咲かせます。また、10月~11月ごろに赤黄色の果実をつけますが、この果実は山梔子(さんしし)と呼ばれ、「日本薬局方」にも収録された生薬の一つでもあり、煎じて黄疸などに用いられるています。
ただし、庭木としてよく栽培されているクチナシは、大型の花で八重咲きのオオヤエクチナシ(英名ガーデニア)が多く、こちらは花は豪華ですが実はつけません
【クチナシ】
性 質:常緑低木
分 類:アカネ科クチナシ属
樹 高:100㎝~200センチ
花 色:白
別 名:ガーデニア
原産地:東アジア
開花期:6月~7月
栽培場所
クチナシは、日陰地にも耐えますが、花付きをよくするためには、ある程度日の当たる半日陰の場所が理想的です。夏の直射日光や強い西日が当たる、乾燥するような場所は嫌います。
クチナシは、寒さに弱い花木なので、寒冷地での庭植えの栽培は難しいでしょう。特に乾いた冬の風には非常に弱く枝の先端が枯れてしまうこともあります。
クチナシを鉢植えする場合、夏に直射日光の当たらない場所に移動させて、それ以外の季節はできるだけ日当たりの良い場所で育ててください。
用土・肥料・水やり
【用 土】
クチナシは、湿り気のある腐植質の多い、水もちの良い土が適します。
クチナシを庭植えする場合、粘土質の土では育ちにくいので腐葉土を混ぜて水はけが良く、軽い土にします。
クチナシを鉢植えする場合、黒土に、腐葉土などを混ぜた、腐植質の多い通気性と保湿性に優れた土が適します。
【肥 料】
クチナシの庭植えの場合の肥料は、2月と8月の開花後に1回ずつ化成肥料と油かすを等量混ぜたものを株元に施します。
クチナシの鉢植えの場合の肥料は、2ヶ月に1回くらい粒状の油かすを株元に与えますが、冬は肥料を与える必要はありません。
【水やり】
クチナシは、乾燥に弱いので土の表面が乾いていたら、たっぷりと水を与えるようにしましょう。特に夏は乾きやすいので、庭植え、鉢植えともに水切れさせないよう注意が必要です。
植え付け
クチナシの植えつけの適期は、春なら4月~5月にかけて、秋なら9月いっぱいです。暑い時期や寒い時期は避けて、気候のよい暖かい時期に植え付けます。
クチナシは、あまり大きくなった株は根付きにくく、若い苗のほうが根付きやすい性質があります。
クチナシを庭植えするときは、水はけを第一に考え、あまり深く掘らず多少山だかに土を盛って植え付けるようにします。植えつけ直後はたっぷりと水を与えて乾かさないように株元をワラや腐葉土で覆うなどします。
クチナシの鉢植えの場合、2年~3年経つと、鉢の中が根でいっぱいになって根づまりをおこすので、一回り大きな鉢に植え替えます。その際まわりの古い土を1/3ほど落として、長い根を切りつめてから新しい土で植え替えるようにしましょう。植え替えの適期は4~5月です。
ふやし方
クチナシは、『さし木』で簡単にふやすことができます。
【クチナシ”さし木”の方法】
6月~8月に、その年に出た新しい枝を先端から15㎝くらいの部分で切ります。
1時間ほどコップなどに挿して水を十分吸水させたら、湿らせた川砂や赤玉土を入れた鉢に挿します。
半日陰の場所で乾かさないように管理すると1ヶ月くらいで根が出てきます。このとき、十分根が出ていれば、秋に植え付けますが、まだ十分根が出ていない場合は寒さの当たらない場所で育てて翌春に植え付けます。
※あまり大きくなった株は植え付けても根付きにくいので、根が生えそろったらできるだけ早く植え付けるか、鉢植えに仕立てた方がよいでしょう。
剪定方法
クチナシは、新しく伸びた元気な枝の先端に花芽ができます。
新しい枝は春から秋にかけて、年2回伸びるのが標準的で、花後すぐの夏と秋に花芽が作られます。ですから、クチナシの剪定は、7月~8月の花が咲きが終わった後が適期となります。
秋以降に剪定すると、枝ごと花芽を切り落とすことになり、翌年の開花が少なくなります。
クチナシは、夏の間に1回目の花芽が作られるので、花後できるだけ早い時期に剪定を行いましょう。
※クチナシは花芽の作られる時期は異なっても、咲く時期は同じで翌年の夏です。ただし、花芽が早く完成してしまった枝は、秋に咲くこともあります。
【剪定の注意点】
混み合った部分の枝や枯れ枝を切り落として、風通しと日当たりを良くする「間引き剪定」が基本です。地際から勢いよく伸びてくる枝(ヤゴ)は見つけ次第早めに切り落としましょう。ただし、生垣など樹形重視の場合を除いて、全体をばっさり刈りこむような剪定しない方がよいです。
樹形が乱れた場合は枝の先端を切り揃える程度の弱い剪定にとどめておきます。花をたくさん楽しみたい場合は、とくにむやみな剪定は避けます。
画像出典:クチナシの花‐たけしの盆栽日記
発生しやすい病害虫
『褐色円星病『さび病』『裏黒点円星病』『すす病』など、いずれも風通しの悪い場所で発生します。剪定による通風と採光を心がけてください。
『オオスカシバ』『カイガラムシ』『アブラムシ』『ロウムシ』『オンシツコナジラミ』などの害虫が付くおそれがあります。
中でも『オオスカシバ』の幼虫が付きやすく葉っぱを食い荒らします。アオムシのような形をしていますが、おしりにツノのようなものが生えているのが特長です。殺虫剤を定期的にまいて駆除しましょう。
クチナシの花言葉
クチナシの花言葉=『清浄』『純潔』
クチナシは『嫁の口がない』に繋がることから、女の子のいる家にはクチナシを植えないほうがいいという俗信があるようです。
しかし、この俗信を逆手にとって、娘を嫁に出したくない理由で、クチナシを家に植えるのは止めたほうがいいでしょう。もし娘さんが、適齢期を超え、ある程度の年齢に達した時、クチナシが家に存在する理由を知ったら、激怒して、クチナシを全滅するかもしれません。
クチナシは、花言葉だけを意識して植えてください。
クチナシの育て方と花言葉
【半日陰に植える常緑低木のガーデニング】のまとめ
夏の風に鼻をくすぐる甘い香りがしたら、それはクチナシの香りです。純白の花姿は花言葉のイメージそのままです。夏のガーデニング低木として、自分だけではなく、ご近所にも喜ばれるクチナシの花はおすすめです。
※栽培方法、植物の生態については、環境により異なります。また、個人的な見解・解釈もありますので、栽培方法や生態については事前によく調べる必要があります。
※花言葉や花名の由来はさまざまに表現され、紹介されています。また、個人的な解釈もありますので、他で紹介する花言葉の由来や意味と異なる場合もあります。
参考=株式会社ナツメ社:想いを贈る 花言葉