ビタミンAは粘膜を保護して免疫機能を高める!
ビタミンAは、皮膚や粘膜の健康を保って免疫機能を維持したり、視力を正常にするなどの働きがあります。何気なく、サプリメントで補給する人もいますが、ビタミンAの特徴を理解することが大事です。
当サイトを一読いただき、日々忙しい人の栄養補給の参考になれば幸いです。
目次
ビタミンAが不足すると?
【ビタミンA不足の症状】 |
肌荒れが気になる・吹き出物が出やすい・風邪をひきやすい・目のかゆみや乾燥・光がまぶしく感じる |
ビタミンAが不足すると、皮膚や消化器官、肺や気管支などの外界と接している上皮細胞(皮膚や粘膜の細胞)の代謝が、うまく行われなくなります。そのため、肌がカサついたり、消化器官の吸収能力が低くなったりします。また、鼻やのどの粘膜が弱くなると、空気中の病原体が体内に入り込み、感染症(風邪など)にかかりやすくなります。
その他、ビタミンAが不足すると、暗い所での視力が著しく衰え、よく見えなくなる『夜盲症』になると言われています。これは、網膜にある「ロドプシン」という明暗を感じる物質(視覚色素)が、ビタミンAからつくられるためです。
ビタミンAの特徴
<ビタミンAは脂溶性ビタミン>
文部科学省:日本食品標準成分表2015年版(七訂)による、ビタミンAの成分値は『レチノール』『α-カロテン』『β-カロテン』『β-クリプトキサンチン』『β-カロテン当量』『レチノール活性当量』の6種類になっており、一口にビタミンAといっても摂取する食品により成分が異なる上に、成分値がややこしい計算値で示してあるものもあるため、チョット理解しにくい栄養素です。
簡単に説明すると、ビタミンAは大きく2つの成分に分けられます。一つは、元々ビタミンAである『レチノール』と、もう一つは、体内でビタミンAに変わる『プロビタミンA』です。いずれの成分も同様の働きをしますが、プロビタミンAに関しては、更に三つの成分『α-カロテン』『β-カロテン』『β-クリプトキサンチン』に分けています。
そして更に、β-カロテンとともに、α-カロテン及びβ-クリプトキサンチンを測定し、計算式で求めた『β-カロテン当量』と、『レチノール活性当量』がビタミンAの成分値になっています。
分かりにくいので、成分ごとの特徴を次項に、まとめてみました。
ビタミンAの成分
文部科学省「日本食品標準成分表」のビタミンAの成分項目には、『レチノール』とカロテノイドの一種でプロビタミンAとして働く『α-カロテン』『β-カロテン』『β-クリプトキサンチン』と計算式で求める『β‐カロテン当量』『レチノール活性当量』の6種が表示されています。
- 【レチノール】
動物性食品に多く含まれており、そのままビタミンAとして作用します。 - 【プロビタミンA】
生体内でビタミンAに転換される物質の総称です。カロテノイド色素群に属し、主として緑黄色野菜や果物に多く含まれる『カロテノイド』がプロビタミンAとしてよく知られています。なお、これらの成分は、プロビタミンAとしての作用の他に、抗酸化作用、抗発ガン作用及び免疫賦活作用(免疫力アップ)が知られています。 - 【カロテノイド】
現在、約600種類のカロテノイドが発見されていますが、この中の約50種類がプロビタミンAです。そして、成分値として出しているのが『α-カロテン』『β-カロテン』『β-クリプトキサンチン』です。
ほうれん草やにんじんといった緑黄色野菜やみかんなどに多く含まれています。 - 【β‐カロテン当量(μg)】
ビタミンA作用を最もよく発揮するのはβ-カロテンであることから、ビタミンA作用をするカロテノイドをβ-カロテンで代表して表したものがβ-カロテン当量です。算出方法は以下の計算式で求められます。
β‐カロテン当量(μg) = β‐カロテン(μg) + 1/2 α‐カロテン(μg) + 1/2 β‐クリプトキサンチン(μg) - 【レチノール活性当量(μgRAE)】
成分表2010年では「レチノール当量」と表記していたが、日本人の食事摂取基準(2015 年版)において「レチノール活性当量(㎍RAE)」と単位の名称を変更しています。算出方法は成分表2010年と同様に、以下の計算式で求められます。
レチノール活性当量(μgRAE) = レチノール(μg) + 1/12 β‐カロテン当量(μg)
ビタミンA摂取の注意点
動物性食品に含まれるビタミンA(レチノール)は摂り過ぎに注意が必要と言われます。確かに、腸管から直接吸収されるレチノールを摂り過ぎると過剰症が心配されています。しかし、過剰症が起こるとされている摂取数値は「短期間に15万㎍RAE以上の摂取、もしくは数カ月~数年の間、1日3000㎍RAE以上」という報告もあり、日常の食生活での過剰摂取は、ほとんど心配ないと思われます。ただし、レバーは、かなり高いレチノール値になっていますので、注意が必要です。
※レチノールを多く含むレバー、あんこう肝、うなぎ等は、毎日大量に食べる食品ではないので、さほど心配はないと思いますが、レチノールは『耐容上限量』が設定されています。「過剰症」には注意してください。
※プロビタミンA(緑黄色野菜)は、体内で必要に応じてビタミンAにつくりかえられ、一定量以上は吸収されにくいので、過剰症の心配はありません。唯一の副作用は、手の平や足の裏が黄色くなる『柑皮症(かんぴしょう)』ですが、しばらく、摂取を抑えれば元に戻ります。
ビタミンA-年齢別一日の食事摂取基準(㎍RAE/日)
年齢 | 推奨量(㎍RAE) | 耐容上限量(㎍RAE) | ||
男 性 | 女 性 | 男 性 | 女 性 | |
0~ 5(月) | 300(目安量) | 300(目安量) | 600 | 600 |
6~11(月) | 400(目安量) | 400(目安量) | 600 | 600 |
1~2(歳) | 400 | 350 | 600 | 600 |
3~5(歳) | 500 | 400 | 700 | 700 |
6~7(歳) | 450 | 400 | 900 | 900 |
8~9(歳) | 500 | 500 | 1200 | 1200 |
10~11(歳) | 600 | 600 | 1500 | 1500 |
12~14(歳) | 800 | 700 | 2100 | 2100 |
15~17(歳) | 900 | 650 | 2600 | 2600 |
18~29(歳) | 850 | 650 | 2700 | 2700 |
30~49(歳) | 900 | 700 | 2700 | 2700 |
50~69(歳) | 850 | 700 | 2700 | 2700 |
70以上(歳) | 800 | 650 | 2700 | 2700 |
妊婦後期(付加量) | – | +80 | – | – |
授乳婦(付加量) | – | +450 | – | – |
参考=日本食品標準成分表2015年版(七訂)
- 【推奨量】=ほとんどの日本人が1日の必要量を満たすと推定される摂取量。(プロビタミンAカロテノイドを含む)
- 【目安量】=十分な科学的根拠が得られず、設定した摂取量ですが、一定の栄養状態を維持するのに十分な量であ り、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどない。(プロビタミンAカロテノイドを含まない)
- 【耐容上限量】=過剰摂取による健康障害の回避を目的として、設定された摂取量。(プロビタミンAカロテノイドを含まない)
ビタミンA(レチノール)の過剰症とは |
頭痛や吐き気をもよおしたり、疲労感が出ることもあります。特に、妊娠初期に大量にとると、おなかの赤ちゃんの発育に悪影響を及ぼすといわれてます。サプリメントなどを使うと過剰摂取になりやすいので注意が必要です。 |
ビタミンAを多く含む食材と調理法
画像出典:ママのブログ2-テレビ岸和田
【ビタミンA(レチノール活性当量)可食部100g当たり成分値】
(参考食材)
肉・魚介 類(レチノール活性当量)㎍RAE | 野菜 類(レチノール活性当量)㎍RAE | |||
鶏レバー(生) | 14000 | モロヘイヤ | 840 | |
牛レバー(生) | 1100 | にんじん(皮つき・生) | 720 | |
うなぎ蒲焼き | 1500 | あしたば(生) | 440 | |
ほたる イカ(生) | 1500 | ほうれん草(通年平均・生) | 350 | |
ぎんだら(生) | 1800 | 西洋かぼちゃ(生) | 350 |
- 加熱調理などにより成分値は変化します。
- 成分値は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)によるものです。これ以前の日本食品標準成分表と異なる場合があります。
ビタミンAを効率よく摂取する調理法
脂溶性であるビタミンAは、油と一緒に調理すると吸収率が高くなります。また、水溶性ビタミンは加熱すると失われますが、ビタミンAは熱に対して安定しているので、加熱調理に適しています。
例えば、にんじんのβ-カロテンでは、ビタミンAの吸収率は、生で食べたときは約20%、茹でたときには約40%、炒め物など油を使ったときには約50%~70%になります。
ビタミンAが不足すると?
【ビタミンの働きと食材からの摂取ポイント】のまとめ
ビタミンAは、単純な栄養素ではないので、分かりにくい部分はあると思いますが、くれぐれも、ビタミンA不足と過剰摂取には注意してください。ビタミンAについて、少しでも理解いただき、健康増進の参考になれば幸いです。
- 参考=文部科学省:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
- 参考=発行所:株式会社 永岡書店:図解でわかる!からだにいい食事と栄養の教科書
- 参考=発行所:高橋書店/あたらしい栄養学
- 参考=発行所:株式会社 学研プラス/知っておきたい栄養学