ビタミンB1は疲れる現代に欠かせない栄養素!
現代社会は、ストレス状態にさらされることが多いうえに、食事も外食やインスタント食品、加工食品ですませる人が増えてきています。そのため、潜在的ビタミンB1欠乏症の人も多いのではないかと考えられています。
何気なく、サプリメントで補給する人もいますが、ビタミンB1の特徴を理解することも大事です。当サイトを一読いただき、日々忙しい人の栄養補給の参考になれば幸いです。
目次
ビタミンB1が不足すると?
【ビタミンB1-おすすめの人】 |
インスタント食品や加工食品を食べることが多い・アルコールや糖質を多く摂る・外食が多い・疲れやすい・イライラしやすい・喫煙者・運動量が多い |
日本人には欠かせないビタミンB1
ビタミンB1は、糖質が代謝されるときに必要な栄養素です。米を主食としてデンプンから多くのエネルギーを得ている日本人には、特に重要なビタミンです。不足すると、糖質がきちんと代謝できず『乳酸』などの疲労物質が体内に蓄積され、疲労感が強くなります。
ビタミンB1の特徴
<ビタミンB1は水溶性ビタミン>
ビタミンB1=神経ビタミン!
ビタミンB1は、別名『神経ビタミン』とも呼ばれ、神経の機能を円滑に保つのに役立っています。このため、不足すると物忘れがひどくなったり、憂うつな気分に陥ったり、イライラするといった症状が現れます。
神経活動をコントロールしている脳は多くのエネルギーを必要とします。ビタミンB1は、脳にエネルギーがきちんと供給されるように働き、この働きによって脳や神経の機能を維持しています。
ビタミンB1不足=脚気(かっけ)
ビタミンB1不足が続くと、手足のむくみやしびれ、動悸、息切れといった症状が現れますが、このような症状を『脚気』と呼びます。白米を主食にするようになった江戸時代末期から脚気が増え『江戸患い』と呼ばれていました。
食生活が豊かになり、副食からビタミンB1を摂ることができるようになってからは、すっかり姿を消したかに思える脚気ですが、現代でも菓子類やアルコールを多く摂り、外食の多い乱れた食生活を送っていると、脚気が起こりやすくなります。
【脚気の簡単な診断法】 |
脚気かどうかを判断する症状として、膝の下のくぼみを叩いて足が自然に跳ね上がらないという検査方法があります。確かにこれは一つの目安にできますので、足が跳ね上がらない他に足のだるさなどの症状があれば専門医を受診しましょう。 |
<脚気検査:参考動画>
お酒好きにはビタミンB1!
ビタミンB1は、アルコールのエネルギーが燃焼するときにも必要です。お酒を飲むときは、豚肉や豆類、種実類といったビタミンB1を多く含む食品をつまみにするとよいです。アルコールをたくさん摂る人にビタミンB1不足が続くと、『ウエルニッケ・コルサコフ症候群』にかかり、中枢神経のマヒが起こります。
【ウェルニッケ脳症の原因】 |
ウェルニッケ脳症の原因はビタミンB1欠乏ですが、アルコール依存症者の代表的な脳症。これはアルコール依存症者に多く、原因は以下に考えられます。 |
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過度の飲酒はビタミンB1欠乏を招きやすくなります。ビタミンB1は糖代謝に必須で、特に脳内では糖質のみがエネルギーに変換されるので、ビタミンB1欠乏は、脳内での糖-エネルギー代謝が破綻し、脳症を引き起こします。 |
参考=飲み栄養失調:久里浜医療センター |
夏バテ防止にビタミンB1!
ビタミンB1は水溶性ビタミンなので、発汗量の多い夏場は汗と一緒に流出してしまいます。夏バテのときに、ビタミンB1を摂りましょうと言われるのは、このためです。
水溶性のビタミンB1は、摂り過ぎたときには、体外に排出されるので、過剰摂取の心配はありませんが、摂りだめできないので、なるべく、毎回の食事で少しずつ摂るように心がけましょう。
ビタミンB1を含む食材と調理法
【豚肉はビタミンB1の宝庫!】
ビタミンB1を豊富に含む食品は豚肉です。脂身よりも赤身部分に多く、ヒレ肉やモモ肉に多く含まれます。また、ハムやソーセージなどの豚肉加工品にも多く含まれ、豚肉はビタミンB1のよい供給源です。この他、魚介類の中では、うなぎやたらこ、いくらなどに多く含まれています。
【ビタミンB1は、ぬかや胚芽に豊富!】
植物性食品の中では、種実類や豆類に比較的多くのビタミンB1が含まれています。特に、カシューナッツや大豆、えんどう豆などに含まれます。また、穀類にも含まれますが、多く含まれるのは、ぬかや胚芽の部分で、米なら玄米や胚芽精米、小麦なら全粒粉に含まれています。精白された白米や小麦粉からは、ほとんどビタミンB1を摂取することはできません。
ビタミンB1を多く含む食材と摂取基準
(参考食材)ビタミンB1 可食部100g当たり成分値(mg) | ||||
豚肉・大型種(mg) | ハム 類(mg) | |||
ヒレ赤肉(生) | 1.32 | 生ハム・促成 | 0.92 | |
ヒレ赤肉(焼き) | 2.09 | 生ハム・長期熟成 | 0.90 | |
ヒレ赤肉(とんかつ) | 1.09 | ボンレスハム | 0.90 | |
ロース脂身つき(生) | 0.69 | 生ソーセージ | 0.51 | |
ロース脂身つき(焼き) | 0.90 | ベーコン | 0.47 | |
ロース脂身つき(とんかつ) | 0.75 | 焼き豚 | 0.85 | |
魚介 類(mg) | 豆・野菜・米 類(mg) | |||
うなぎ蒲焼き | 0.75 | だいず国産 黄大豆(乾) | 0.71 | |
ブリ(生) | 0.23 | らっかせい(乾) | 0.85 | |
あゆ 天然(生) | 0.13 | だいこん・ぬかみそ漬 | 0.33 | |
あゆ 天然(焼き) | 0.23 | 玄米(炊き) | 0.16 | |
たらこ(生) | 0.71 | 半つき米(炊き) | 0.08 | |
からし めんたいこ | 0.34 | 七分つき米(炊き) | 0.06 |
- 加熱調理などにより成分値は変化します。
- 成分値は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)によるものです。これ以前の日本食品標準成分表と異なる場合があります。
ビタミンB1-年齢別一日の食事摂取基準(mg/日) | ||||
年齢 | 推奨量(mg) | 耐容上限量(mg) | ||
男 性 | 女 性 | 男 性 | 女 性 | |
0~ 5(月) | 0.1(目安量) | 0.1(目安量) | ー | ー |
6~11(月) | 0.2(目安量) | 0.2(目安量) | ー | ー |
1~2(歳) | 0.5 | 0.5 | ー | ー |
3~5(歳) | 0.7 | 0.7 | ー | ー |
6~7(歳) | 0.8 | 0.8 | ー | ー |
8~9(歳) | 1.0 | 0.9 | ー | ー |
10~11(歳) | 1.2 | 1.1 | ー | ー |
12~14(歳) | 1.4 | 1.3 | ー | ー |
15~17(歳) | 1.5 | 1.2 | ー | ー |
18~29(歳) | 1.4 | 1.1 | ー | ー |
30~49(歳) | 1.4 | 1.1 | ー | ー |
50~69(歳) | 1.3 | 1.0 | ー | ー |
70以上(歳) | 1.2 | 0.9 | ー | ー |
妊 婦(付加量) | ー | +0.2 | ー | ー |
授乳婦(付加量) | ー | +0.2 | ー | ー |
参考=日本食品標準成分表2015年版(七訂)
- 【推奨量】=ほとんどの日本人が1日の必要量を満たすと推定される摂取量。
- 【目安量】=十分な科学的根拠が得られず、設定した摂取量ですが、一定の栄養状態を維持するのに十分な量であ り、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどない。
- 【耐容上限量】=過剰摂取による健康障害の回避を目的として、設定された摂取量。
(ビタミンB1は耐容上限量は設定されていません。)
ビタミンB1を効率よく摂取する調理法
画像出典:魚料理と簡単レシピ
手早く調理して、出来立てを食べよう!
ビタミンB1は、水溶性のため流出しやすく熱にも弱いため、調理によって損失されやすい栄養素です。調理損失を少しでも防ぐためには、長時間水にさらしたり、加熱したりせず、手早く合理的に調理するのが効果的です。煮物などは、出来立てを汁ごと食べるとよいです。
野菜は“ぬかみそ”に漬けてビタミンB1を増やす!
きゅうりや大根、なすなど、野菜をぬかみそ漬けにすると、ぬかみそに含まれるビタミンB1が野菜に吸収されて、ビタミンB1の含有率が約7倍にアップします。更に、胃腸の働きを助ける乳酸菌も増えるため、便秘や下痢の予防・改善にもなります。
ねぎや玉ねぎと一緒に!
ねぎや玉ねぎ、にんにく、にらなどに含まれる「アリシン」は、ビタミンB1の吸収をよくして糖質の代謝を促します。また、アリシン+ビタミンB1は疲労回復に役立つほか、スタミナがつくため、夏バテ防止に効果的です。
ビタミンB1が不足すると?
【ビタミンの働きと食材からの摂取ポイント】のまとめ
飽食の今の時代、「脚気」なんてあり得ないと思いますが、便利で、美味しいものがありすぎて、食が偏り、ビタミンB1不足から脚気になるケースも少なくないようです。サプリメントでの補給もいいとは思いますが、出来るだけ食事から、まんべんなく栄養補給することをおすすめします。
- 参考=文部科学省:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
- 参考=発行所:株式会社 永岡書店:図解でわかる!からだにいい食事と栄養の教科書
- 参考=発行所:高橋書店/あたらしい栄養学
- 参考=発行所:株式会社 学研プラス/知っておきたい栄養学